当院で受けることのできる
発達障害支援プログラム
ご本人の特性や置かれている環境に合わせた提案をさせていただきます。
今よりも、「仕事に取り組みやすくする」「日常生活の困った!を減らす」「人間関係や生きづらさをラクにする」などのちょっとした工夫を取り入れることで、苦手を乗り越えていく力を身につけることができます。当院では面談を通して丁寧にお話を聞かせていただき、ご本人の特性や置かれている環境に合わせた提案をさせていただきます。
「忘れっぽい」でお困りの方

記憶力スキルアップ
こんな方におススメです。
- 指示や予定などを忘れやすい
- 物を無くす、忘れやすい
- 一度にたくさん言われると混乱しやすい
発達障害の方は口頭で伝えられたことをすぐに理解できない、覚えられないという特性があります。またワーキングメモリー(一時的に記憶を留める働き)が弱いという特性もあり、忘れやすさに繋がっています。
記憶補強のための工夫を取り入れることで、うっかりミスや聞きもらし、忘れ物などのトラブルが少なくなることが期待できます。
取り組み事例


予定を忘れやすいAさん
- まだ先だなと思っていたら、気づくと締切や約束の時間が迫っていて慌てる。
- メモや予定を書き忘れる、見忘れてしまう。
提案された工夫・対処法
- ●自分に合ったスケジュール表やスケジュール管理アプリを使い、予定に意識を向けやすくする。
- ●課題の締め切りや約束内容を忘れてしまったら話題に出して、確認する。
- ●忘れっぽい事を親しい友人にも相談して、声かけをしてもらう。

取り組んでみた感想
登校前、昼休み、就寝前に予定を確認するようにしました。今日は何をするのか、明日は何をしたらいいのかイメージして生活するようにしたことで、課題の締め切りや友人との約束を忘れて慌てることが少なくなりました。おかげで先生や友人からの信頼も回復してきたと思います。

マルチタスクが苦手なBさん
- 聞きながらメモを取るのが苦手。
- 作業中に、別の用事が入ると元の作業を忘れてしまう。
提案された工夫・対処法
- ●メモのフォーマットを決めて、それに従って書くようにする。
- ●周囲にお願いして、指示や依頼は紙やメールでしてもらう。
- ●やることリストを作る、リマインダー(再確認通知)を活用するなどして、一つ一つの作業を順番に処理していく。

取り組んでみた感想
上司や同僚に事情を説明して、指示や依頼を紙に書いてもらうようにしました。書き漏れや間違いがないので、それだけでミスが減り助かっています。思い切って周囲に相談して良かったです。
「集中できない!」でお困りの方

集中力スキルアップ
こんな方におススメです。
- 今やるべきことと関係ないことに気を取られやすい
- 常に落ち着かず、動き回る(多動)
- 一つのことに集中しすぎて他の作業ができない
発達障害の方は、興味のないことに集中が続かない(不注意)一方で、一つのことに集中すると何時間でものめり込んでしまう(過集中)、という特性もあります。
過集中を防ぐための創意工夫や、集中力を高める取り組みを実践することで作業効率が上がり、その分他にやりたいことに時間を使えるようになります。
取り組み事例


勉強に集中出来ないAさん
- 苦手な授業や課題に集中出来ず、すぐスマホを見てしまう。
- すぐ動きたくなり、トイレや休憩に行ってしまう。
提案された工夫・対処法
- ●「20分間作業、10分間休憩」など作業を小分けに区切って集中力を管理する。また休憩中はスマホを見る、コーヒーを飲むなど自分が楽しめるご褒美を与える。
- ●スマホはロッカーやカバンなど、すぐに触れないところにしまっておく。
- ●登校前や昼休みに散歩するなどして勉強中の多動性を抑える。学校がOKであれば授業中に気持ちを落ち着かせるための手遊びグッズを使う。

取り組んでみた感想
時間で区切って集中して作業し、休憩中にトイレやコーヒーを飲みに行くにいくことで、席を立つ回数が減り、期限内に課題を終える事ができる様になり、大変助かりました。

過集中で仕事や家庭に支障が出ているBさん
- 一つのことに集中しすぎて他の業務が出来なくなる。
- 帰宅後はぐったりで食事も作れず、夫にきつく言われてしまう。
提案された工夫・対処法
- ●時間で作業を区切り、必ず休憩をとるルールを設ける。
- ●時間で区切れるようにアラームを設定する。
- ●これまでの経験から、自分の体力の限界や疲労のサインを知り、休憩の目安(チェックリスト)を作る。

取り組んでみた感想
疲れに鈍感なので、疲労のチェックリストを作りました。チェックが多い日は疲れているサインなので、アラーム設定して過集中(集中のしすぎ)を防ぐ、早めに帰るなど対策を取るようにしています。夫にも相談し、疲れている日の食事は調理キットや総菜などを利用する事にしました。自分の事を理解してもらう事で、ぎくしゃくしていた夫婦関係も改善でき嬉しいです。
「スケジュール管理ができない」でお困りの方

時間管理スキルアップ
こんな方におススメです。
- 不注意で時間や場所を間違え時間に遅れる
- 「まだ大丈夫」と思っていたらいつも時間が
ギリギリになってしまう - 作業の優先順位をつけることが苦手で、
相手をイライラさせてしまう
発達障害の方は、時間の感覚が弱く見通しを立てづらい、具体的な行動のイメージが湧きづらく優先順位をつけることが苦手といった特性があります。やるべきことが複数あるとどこから手を付けてよいか分からず混乱してしまうことがあります。
時間管理の工夫をすることで、やるべきことを自分で管理し、時間に追われることなく物事に取り組むことが出来るようになります。
取り組み事例


約束の時間にいつも少し遅れるAさん
- 余裕をもって起きたはずなのに、気づくと家を出ないといけない時間になっている。
- 約束の時間や場所を勘違いしていることに直前に気づき慌てる。
提案された工夫・対処法
- ●行動記録などをつけて自分が時間をどう使っているのかを知る。
- ●朝の支度の流れや、朝食の献立、服装などパターン化して迷う時間を減らす。
- ●1日の中で予定を確認する時間を決めて、忘れないようアラームを設定する。
- ●予定時間を30分程早く設定する。

取り組んでみた感想
朝は服選びに時間がかかっていることが分かったので、ある程度パターンを絞り、余裕があれば前日の夜に決めるようにしました。周囲からも、最近遅刻が減ったねと言ってもらえてうれしいです。

優先順位がつけられないBさん
- 子供の学校への提出書類などの用事を後回しにしてしまい、気づくと締め切りギリギリになって焦る。
- 子供の事や家事など、やることが複数あると焦って何から手を付けたらいいか分からなくなる。
提案された工夫・対処法
- ●朝一番に、簡単な事でもやることをリスト化。「今日中に終わらせること」「数日中に終わらせること」とタスクを分けて優先順位をつける。
- ●取り組みやすいことから始めてみる。
- ●自分へのご褒美を用意する、「とりあえずこの1枚を終わらせる」と取りかかりのハードルを下げるなど、自分なりのやる気スイッチをみつける。

取り組んでみた感想
頭の中で、やらないといけないことがあれこれ浮かんでプレッシャーでしたが、書き出すことでタスクが整理されて見通しが立ち、不安や焦りが減りました。やることが一つ終わったら、リストを何重も線を引いて消すことで、達成感を味わっています。
「人付き合いが苦手!」でお困りの方

コミュニケーションスキルアップ
こんな方におススメです。
- 人と上手く話せない
- 話が分かりにくいと言われる
- よく相手を怒らせてしまう
人間関係でトラブルになりやすい、人づきあいが苦手と感じている方が多いです。他にも言いたいことが伝わりにくい、仕事や誘いを断れない、雑談が苦手で会話に入りづらいなどでお困りの方も多いです。
このプログラムを受けことで、より良いコミュニケーションスキルを身につけることができます。それにより自分だけでなく、相手も心地よく対話ができ、人間関係が円滑になり、トラブルも少なくなります。
取り組み事例


雑談が苦手なAさん
- 大勢での雑談になると会話についていけず、何を話していいかわからない。
- 話しかけられても上手く返せない。
- 雑談の場を避けてしまい、クラスで孤立しやすい。
提案された工夫・対処法
- ●無理に話そうとせず、相手の話を聞くスキルを身につける。
- ●無理に大勢での会話に入ろうとせず、近くの人との会話に集中する。
- ●天気や時事ネタなど会話の話題を用意しておく。
- ●場を離れたいときの自然な断り方を練習する。

取り組んでみた感想
「何か話さなきゃ」「話しかけられたらどうしよう」と焦りや緊張で頭がいっぱいになっていましたが、聞き役に専念し、自分が出来る範囲のコミュニケーションでいいのだと考えられるようになり、気持ちが楽になりました。しんどくなってきたらトイレに行くなどを理由に場を離れる様にしています。

報告・連絡・相談が苦手なBさん
- 一生懸命説明するが、何を言っているのか分からないと言われてしまう。
- 自分では必要な報連相はしているつもりだが、「もっと早く言ってほしい」と言われる。
提案された工夫・対処法
- ●報連相のフォーマットを作り、事前に伝える内容を整理する。
- ●上司と相談して、報告の時間を決めて、スケジュールに組み込む。
- ●分からないことがあった時は自分で5分間考えて、解決しなければ相談する。
- ●相談したい相手が不在の時は、手が空いたら声をかけてほしい旨を付箋に書いて机に貼っておく。

取り組んでみた感想
フォーマットを作り、面談の時にはそれを使って相談の練習をしました。書き込むことで、頭の中の伝えたいことを客観的に整理でき、相談しようと思っていたことを自分で解決できることもありました。それにより上司への報連相もスムーズにでき、以前よりも関係性がよくなりました。
「感情コントロールが苦手!」でお困りの方

感情コントロール
こんな方におススメです。
- 相手の指摘をネガティブに捉えやすい
- 嫌な考えを何度も頭の中で考えてしまう
- 感情が表に出やすい
発達障害の方は、失敗や叱責の体験を重ねていることが多く、「自分はダメな人間だ」など自分に対する否定的な考え方やマイナス思考が強まっていることも多いです。また怒りの感情を人や物に衝動的にぶつけてしまい、関係が悪化したり自己嫌悪に陥ることもあります。つらい気持ちを落ち着かせる方法や、自分の考え方のクセを知り気持ちが楽になる考え方を身につけることで、心が軽くなります。
取り組み事例


気分が落ち込みやすいAさん
- 物事をネガティブに捉えてしまいやすい。また、気づくとそのことをずっと考えて落ち込む。
提案された工夫・対処法
- ●マイナス思考自体は無くならないので、上手く付き合う練習をする。
- 例
- ・自分の考え方のクセに気づき、どんな時に心が辛くなりやすいのか知る。
- ・マイナス思考にはまった時に客観視をして、対策をとれるようにする。
- ・不安など強まった時に、深呼吸するなど気持ちを落ち着かせる方法を試し、自分に合った方法を見つける。

取り組んでみた感想
ネガティブに考えてしまうことは悪いことと考えていたので、そうではないと知り驚きました。考え方のクセ自体はなかなか変えられませんが、その思考にはまっていることに気付いたら、一旦呼吸に集中して気持ちを切り替えるよう練習を続けています。おかげで気分が楽になりました。

感情がすぐに表に出てしまうBさん
- 仕事が思うように進まないときや、ミスを指摘されると怒りが表情や態度に出てしまい、ひどいときには部下に怒鳴ってしまったり、机や椅子を蹴ってしまい、その場の雰囲気を悪くしてしまう。
提案された工夫・対処法
- ●怒りの感情は誰にでもあるであるため、上手く付き合う練習をする。
- 例
- ・イライラを感じたらその場を離れ、静かな場所で深呼吸や瞑想などで心を落ち着かせる。
- ・ストレスや疲労を溜めないよう、日頃から体を動かしたり、睡眠をしっかりとるようにする。
- ・アンガーマネジメント(怒りのコントロール)を学ぶ。

取り組んでみた感想
記録をつけてみて、疲れがたまっている時は特にイライラして態度に出やすいことに気づいたので、休日に予定を詰めすぎないように気をつけています。イラっとした時はとにかくその場を離れて気持ちを落ち着かせ、次にどういう行動を取るか冷静に考えて動くようにしました。周囲に怒りをまき散らすことが減り、周りとの関係も良くなりました。
「音や光などの刺激に対して敏感または鈍感」でお困りの方

感覚コントロール
こんな方におススメです。
- 蛍光灯の光や動く人が気になる
- 人が多く、ざわざわした場所や突然の大きい音が苦手
- 疲労感、空腹感などが分かりにくい
- 知らないうちに体に傷やあざがあり、痛みに気づきにくい
感覚刺激に対する過敏性は、発達障害の特性の一つです。音や光、匂い、肌触りなど何に敏感かは人によって異なります。多くの人には気にならない刺激でも、過敏性が高ければ強い不快感や苦痛のもとになります。また反対に感覚刺激に鈍く気づきにくく自覚するまでに非常に時間がかかる場合もあります。自分でできる対策をとりつつ、周囲の理解を求め、苦手な刺激の少ない環境を整えていくことが必要です。
取り組み事例


聴覚過敏のあるAさん
- 仕事をしていても話し声や機械音など周囲の雑音が気になり、落ち着かない。雑音が多いと疲れてしまう。
- 突然外から聞こえるサイレンの音などに驚いてフリーズしてしまう。
提案された工夫・対処法
- ●イヤーマフや耳栓、ノイズキャンセリングイヤホンなどを使用する。
- ●疲労がたまる、不安が強まると過敏症状が出やすくなるため、早めの休息や自分なりのリラックス方法を見つける。
- ●買物は人の少ない時間や場所を選ぶ、宅配を利用する。

取り組んでみた感想
職場に相談して、デスクの位置をなるべく静かな場所に変えてもらいました。また集中したいときはノイズキャンセリングイヤホンを使うようにしたところ、周囲の雑音があまり気にならなくなりました。どうしても気になるときは一度その場を離れて、好きな香りのアロマを染み込ませたハンカチの匂いをかぐことで気持ちを落ち着かせています。おかげで仕事が捗るようになりました。

自分の感覚が分かりにくいBさん
- 暑さや寒さがわかりにくい。適切に水分が取れず熱中症になったり、寒いのに薄着をして風邪を引くことがよくある。
- ストレスや疲労を自覚しにくく、朝起きてからだが動かない事で初めて疲れていることに気づく。それにより学校に行けない日も増えている。
提案された工夫・対処法
- ●自分で感覚をつかみにくい場合は、客観的な目安を作って対処する。
- 例
- ・食事や水分をとる時間や量を決めておく。
- ・服装予報などのアプリを使って、その日の服装を決める。
- ・決めた時間に休むようにする。
- ・「ミスが増える」「肌荒れする」など自分で気づきやすいことをサインとして休息を取る。
- ・周囲にも相談して疲れているように見えたら声掛けをしてもらう。

取り組んでみた感想
食事や水分、休憩など時間や量の目安を決めることで、体の調子が整い学校に行ける日が増えてきました。自分の疲労のサインをリスト化、家族や友人にもそれを知ってもらう事で、早めに休むことができるようになってきました。